まずは「英和辞典の選び方」🐸ホンマかいな♪
辞書の発音記号もよくわかるようになる、
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おすすめできる英和辞典
英和辞典には、種類がいろいろある。大きくは:
⭐︎(小中学生用)入門辞典
⭐︎ 高校生用学習辞典
⭐︎ 一般用(学習)辞典
⭐︎ 一般辞典・大辞典
その他に各種専門用語辞典の類も結構豊富にあるが、こういうのは各分野に馴染のある人がそれぞれ明確な目的を持って利用なさるものであるから、ここで私が解説する必要はないであろう。ここでは、いわゆる普通の人が英語習得の目的でフツーにお使いになる一般辞典を紹介。
⭐︎(小中学生用)入門辞典
⭐︎ 高校生用学習辞典
⭐︎ 一般用(学習)辞典
⭐︎ 一般辞典・大辞典
その他に各種専門用語辞典の類も結構豊富にあるが、こういうのは各分野に馴染のある人がそれぞれ明確な目的を持って利用なさるものであるから、ここで私が解説する必要はないであろう。ここでは、いわゆる普通の人が英語習得の目的でフツーにお使いになる一般辞典を紹介。
入門辞典:小中学生向け + 大人・シニア向け
入門辞典:目下、「子供向け」から「小学校英語」への過渡期です
昨今の顕著な傾向は、入門辞典の隆盛である。これは当然であろう。事実上小学校でも英語の時間ができ、その一方では急増しつつある「まだまだ若い高齢者」 が英語最入門に興味を示す。英語産業にとってはおいしい時代になり得る。
その割に良いものが競争を繰り広げている感じもない、これも当然である。現行の「小学校で英語」も明確な指針がない(現場と無関係な役人の作文があるだけ)。選ぶ方も戸惑いつつ、とりあえず良質の中学生向け辞書から選ぶことになる。
まぁ、この辺りは発音表記がどうとか、語法注記がどうとかいう問題より、「使いたくなる」「見やすい」ことの方が重要だろう。カラーイラストをつけ、日本風物・文化の紹介コーナーを設け、ちょっとした挨拶表現などを載せ…と、どれも似たようなことをやっているので、迷う親御さんも多いかと思われるが、そのあたりは本質的な部分ではない。結局のところ、あまり流行に流されず、純粋に英語習得に役立ちそうな、楽しいものを選ぶのが良いのではないでしょうか。
昨今の顕著な傾向は、入門辞典の隆盛である。これは当然であろう。事実上小学校でも英語の時間ができ、その一方では急増しつつある「まだまだ若い高齢者」 が英語最入門に興味を示す。英語産業にとってはおいしい時代になり得る。
その割に良いものが競争を繰り広げている感じもない、これも当然である。現行の「小学校で英語」も明確な指針がない(現場と無関係な役人の作文があるだけ)。選ぶ方も戸惑いつつ、とりあえず良質の中学生向け辞書から選ぶことになる。
まぁ、この辺りは発音表記がどうとか、語法注記がどうとかいう問題より、「使いたくなる」「見やすい」ことの方が重要だろう。カラーイラストをつけ、日本風物・文化の紹介コーナーを設け、ちょっとした挨拶表現などを載せ…と、どれも似たようなことをやっているので、迷う親御さんも多いかと思われるが、そのあたりは本質的な部分ではない。結局のところ、あまり流行に流されず、純粋に英語習得に役立ちそうな、楽しいものを選ぶのが良いのではないでしょうか。
老舗どころでは、学研『ジュニア・アンカー英和・和英辞典(第6版)』(2016年)が良心的なところ。
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ベネッセ『Challenge 中学英和辞典(第2版)』(2015年)は、「中学」と言いつつ実質上は小学校英語もにらんだ内容である。学習辞典というより、「辞書ってこんなものということを学ぶための辞典」である。その意味では英和・和英の1巻本が使いやすいかもしれない。
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また、くもん出版『はじめての英和辞典』(2011年)もズバリ小学生(の親御さん)に向けた辞書である。ページ数が少なく絵も豊富なので、本として読んでしまうかもしれない。そうなると「辞書って読むものだ」ということを体で覚えてくれる…なら大したものである。
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再入門者用辞書:大人・シニア向け
「大人のための英語再入門辞典」というジャンルは無視できない。紙の辞書が残りそうな分野だし、少子化の時代ということもあり、将来性のある市場というか、出版社としては狙いたいとこでしょう。
目下のところ、「大人のための英語再入門」市場は、常識的な英語学習辞典に向かっていると思われる。英語を学びたい日本人なら、良心的な日本人が作った学習辞典を評価するものだ。まして相手はイヤイヤ教室に座っている高校生ではなく、学ぶ気のある大人なのだ。結局は、良質で本格的な学習辞書・文法書が売れるだろうと思う。(近年増えた、往年の英語参考書の復刊の数々がこれを物語っている。)
「大人のための英語再入門辞典」というジャンルは無視できない。紙の辞書が残りそうな分野だし、少子化の時代ということもあり、将来性のある市場というか、出版社としては狙いたいとこでしょう。
目下のところ、「大人のための英語再入門」市場は、常識的な英語学習辞典に向かっていると思われる。英語を学びたい日本人なら、良心的な日本人が作った学習辞典を評価するものだ。まして相手はイヤイヤ教室に座っている高校生ではなく、学ぶ気のある大人なのだ。結局は、良質で本格的な学習辞書・文法書が売れるだろうと思う。(近年増えた、往年の英語参考書の復刊の数々がこれを物語っている。)
小学館『プログレッシブ 大人のための英語学習辞典』(2015年)は、題名がすべてを語っている。すなわち同社の『プログレッシブ中学英和・和英辞典』を(ほぼ)そのまま大判にして「大人のため」と銘打ったのである。事実上、字の大きさと装丁が違うだけである。まだまだ未成熟な市場であるから、これもやむを得ないというべきか。しかし、本としての使いやすさはオリジナルの方が上。
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学研プラス『アンカー 大人のための英語学習辞典』(2016年)も同様で、明らかに同社の『ジュニア・アンカー』を拡大印刷して「大人のため」に装丁したものである(手に取るとデカイ!感じで、字も驚くほど大きい)。こちらも、私ならオリジナルを選ぶなぁ…
同じネタを焼き直す商道徳に疑問を感じる人もあるかもしれないが、別に「悪い」ことをしているわけでもなかろう。要するに、この市場がまだまだなのだ。 |
また、後述(↓)の『ヴィスタ英和辞典』の「大きな活字版」があるのは興味深い。ヴィスタは「学校の英語の授業がつまらない人・ダメな人」(私もそうだったなぁ)を念頭に作られた側面がある。英語の再入門をしようという大人は、なんらかの意味でこれに当てはまるのだとすれば、この種の「良質の参考書になる英和辞典」を必要とするのではなかろうか。
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なお純粋に入門者用ということで言えば、白水社の『パスポート』という入門者向け辞書のシリーズが(英語以外の言語で)上手に開拓しつつある。英語についても同じことをやれば良いのだと思う。私の目には学研プラス『アクセスアンカー英和辞典(第2版)』(2016年)が一番近いように見える。他にも出てくるだろう。これからが楽しみですなぁ。
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高校生用学習辞典(5万語前後)
学研『スーパーアンカー英和辞典(第5版)』(2015年)
とりあえず、一番「良い」学習辞典としてのスーパーアンカーも、5版を数えた。初版を書店で見つけて「こりゃスゴイ」と驚き、買って帰ってそのまま何日かかけてほとんど通読したのも懐かしい思い出になりつつあるなぁ…。 1972年に初版が発行された『アンカー英和辞典』は質も人気も高く、版を重ねて『ニューアンカー英和辞典』などに名前を変えた。それが全面改訂され、 さらに手を加え、ここまで版を重ねた。悪くなりようがない。 例文・用例の多くは英米の辞書の引き写しである。これは日本で発行される英和辞典において当たり前のことである。英語の先生方におかれては、このスーパーアンカーと、OALD・LDOCE・ランダムハウス等々の辞書を(ちょっとで良いので)比較参照してみていただきたい。「おぉ、こうやって英米の辞書から学習者向け情報を拾うわけか!」という案内になる。学習者の皆さんなら「えーっ、こんなに…だったら元の辞書を見ようかな」と思うかもしれない。それはとても良いことである。 ことわざやキリスト教関係の概念・文化一般の解説が圧巻で、語義・語法解説なども明快そのもの。「日⇔英比較」などのコラムもよくできている(例えば scripted の項目のコラムなど;'How are you?' と声をかけると必ず 'Fine, thank you.' と返ってくるのを不気味に思っている英語話者の同僚は多い)。 この辞書も、初版発行から結構な年月が経過した。「くしゃみをした人にはBless youなどと言います」をはじめとした内容は(初版発行時でもすでに古かったが)急速に古くなっていく。「キリスト教文化では…」という記述も成立しにくくなってきた。辞書はやはり言葉に徹するのが良いのだろうか。だからこそ「直訳の落とし穴」というコラムもあり、相変わらずお買い得というか、大したものである。 |
三省堂『グランドセンチュリー英和辞典(第4版)』(2016年)
『ニューセンチュリー英和辞典』の改名・改訂版(この初版など、私の愛用辞典の一つだった)。語義の示し方が大変見やすいのが特長。「ひとつの単語にい ろいろな意味があってかなわん」と思う人は、一見の価値あり(とはいえ、この工夫は他の辞書にマネされてしまっているので、もはやこの辞書だけの特長では なくなってしまった)。 この第4版で発音表記が改善した。まだ私には不満が残るが、これは画期的と言っても良い。日本で発行される英和辞典において(恥ずかしいほど)遅れており、混乱しており、一貫性がなく、分かりにくく、学習意欲を削ぐのが、発音記号・表記である。英語の標準表記はそれなりに出来上がってきているのだから、それを「真似」するのが正解であろう。学習者の皆さんは英和辞典を踏み台にして英語の世界に入っていくのだから。 「センチュリー」は、今日書店にあふれる「見やすい・わかりやすい」学習辞典の先駆であり、この辞書のアイディア・工夫は様々な辞書に真 似をされている。第3版(の途中)で、その監修者、木原研三氏が亡くなった。「センチュリー」にいろいろ教わった私としては感無量のものがある。 |
桐原書店・ロングマン『ロングマン英和辞典』(2007年)
確かにLDCEは良い辞書である。しかし、 これを(もとにして)英和にしちゃうとは…ほんと、日本人の英語学習熱は上から下までスゴイものがありますなぁ。 基本的に、こういうことは、やらないものである。英英辞典は、大量のデータに触れながら基本語彙を本当に習得していく道具である。いわば、英語の世界での幼年時代・少年時代・青年時代を疑似体験しながら身体で英語を覚えるわけである。だから見出し語数はそれほど多くなく、その代わり大量の典型的例文が投入されているのである。固有名詞や専門用語については英和辞典の方が早い。あるいは、自分でその分野の英語を読んで習得する。英英辞典は、各分野共通の英語の基本部分を体得する道具なのである。 これを英和化するとどうなるか。まず第一に、大量の例文に和訳をつけるので巨大なものとなり、第二に、どうしても日本語が目に入って「基本的な英語を身体で経験する」という眼目の部分がなくなってしまう。だから、普通、英英辞典の日本語化はやらないのである。英和辞典には英和辞典の用途が別にある。 それをやったんだから、当然の結果になる。すなわち、(巨大なものになるのを避けるため)バンバン例文が消された。残った例文に日本語の訳がついた。すると「大量の例文に触れて基本的な英語を身に付ける」の裏返しができあがる。すなわち「例文は少なく、基本的な英語の例文にわざわざ日本語の訳がついている」となったのである。 もちろん、そんなことは百も承知でやったはずである。この辞書の編集には、私も尊敬する先生方が名前を連ねておられる。敢えてやったからには、何か思わぬ利点もあるのだろう。そう思って虚心に検討した。良い点を見つけようとした。何とか自分を納得させようとした。確かに悪くない出来ではないか。初学者には良いかもしれない。中学高学年なら良いかな。いや、小学校から英語を導入するとかいう学校も出てくるだろうから(ヒドイ話だねぇ、あれも)、それに対応するためかな。あるいは学力低下に対応かな。待てよ、それなら良い英和辞典がすでにあるではないか…。まぁその種の英和辞典も、どうせLDCE やOALDを引き写しているのは事実だが、それにしても… というわけで、いくら前向きに考えようとしても「やっぱりこれは根本的にどこかがオカシイ」という腹の底からの感覚が否定できない。もともと「英語の世界を生で体験してね」という趣旨の作品を、「おまえらには無理だから」と言わんばかりに作り替えるという態度が納得できない。「英語が出来なくても大丈夫だよ」と言ってアメリカなんかに日本の若者を送り込む(悪質)留学エージェントを連想してしまう、 と言えばおわかりいただけるであろうか。英和辞典のあり方を考えるきっかけになる一冊ではある。 |
小学館『ユース・プログレッシブ英和辞典』(2004年)
定評ある『プログレッシブ英和辞典』(後述↓)から生まれた、見やすく良質の学習辞典が『ラーナーズ・プログレッシブ英和辞典』だった。その改訂版がこれ。もとが良いんだから、悪くなりようがない。コーパス情報をグラフ化して取り入れたりしているが(当時流行だった)、基本的には言葉の使い方に徹したわかりやすい辞書なので、内容が古くなりにくい。手応えのある習得を目指す人なら、持っていたくなるだろう。 個人的な趣味としては『スーパーアンカー英和』と双璧の「最良の学習英和」と位置付けたいところだが、いささか分厚くなってしまったので(2100ページほど)ちょっと買い手を遠ざけてしまったかもしれない。「総収録項目数」8万5千。 この辞書も同社の『ワードパル』(これも悪くない)も改訂されていない。この少子化の時代、小学館はこの種の学習英和辞書から手を引いてしまったのだろうか。『プログレッシブ英和』は学生向けからビジネス向けに衣替えしたし、『プログレッシブ中学英和』は子供向けか大人向けか決めかねている格好だし…商売とは、そういうことなのかなぁ。 |
三省堂『ヴィスタ英和辞典』(1997年)
英語を教える現場から生まれた辞書。収録語彙数を押さえて、語義や用例の示し方に工夫を凝らしてある。要らぬ文法用語は使わない(例えば「可算名詞」 などと言わず、ポンと複数形を示す)。例文の訳の多くで直訳と普通の和訳を併記している。要するに、ゴチャゴチャ説明せず、大事なことを「示す」のだ。英語が苦手な学生に根気よく教える先生の姿がにじみ出ているようである。 しかし、発音カナ表記には、やはり限界があるだろう。[サンヌ] (sun)はまだしも、[ツレムブオ](tremble)は奇妙である。この奇妙な表記に慣れるため、「カナ発音について」という解説を読まねばならな い。だったらはじめから発音記号に慣れても良いんでは、となる。 とはいえ、この画期的な見やすさ、柔軟な文法解説(試しに adverb の項を見よ;感激するぞ)等々、これはきっと良い英語の先生が自分をごまかさずに作ったんだろうなぁと思わせる出来である。手元にあると楽しい辞書。特に「英語が嫌い」な人や、あるいは英語の先生を目指す人にも、良き参考書としてお勧めできる。 こんなに面白い辞書なのに、改訂版もないまま、若林さんも亡くなってしまった。しかし今でも入手可能だし、「大きな活字」版もある(↑上述)。 |
一般用(学習)辞典(10万語前後)
研究社『コンパスローズ英和辞典』(2018年)
これはよくできた「既存のネタの集大成」である。既存の『ルミナス英和』をベースにし、既存の出版物を使って語義イメージ図示を強化しつつ、『ジーニアス英和(5版)』(後述↓)と『ウィズダム英和(3版)」(後述↓;ウィズダムは同時期、2018年末に4版が出てます)を意識しつつ(というか横目で見つつ)…さながら「紙媒体の学習英和の決定版!」的に編集してある。考えてみれば辞書の編集は「既存のネタの集大成」なのだ。うまくやれば、うまくいく。 考えてみれば、英語を母語としない日本なのに、英語という外国語をよくまぁ調べて各種辞書・参考書が数多く作られている。そこにはいろいろ問題もあるけれど、それなりの蓄積があるのも事実。研究社ほどの老舗が「使えるネタ」を上手につなげば、こんなものができるのだ。 言葉の辞書として見やすく、わかりやすい。「英語という外国語を習得するお手伝い」に徹する形である。どういう編集方針だったかは知らないが、結果として日本の英和辞典の良いところを継承する姿勢となっている。「コミュニケーション対応」だの「グローバル対応」だの宗教現象じみた風潮に迎合して小手先の新機軸が現れては空中分解する市場において、こういう辞書があるのは良いことである。 この辞書は、「TOEIC頻出の2000語句を3段階に分けて明示」した上、巻末にその語句のリストが付されている。面白いことに、それだけなのだ。ご存知の方はご存知の通り、TOEICの世界は、要するに「清く正しい資本主義的世界で倫理的経営を行う企業人の常識」をベースにした、非現実的・お花畑的ビジネス・ドグマの世界である(「昔はキリスト教、今じゃグローバル・ビジネス教を絶賛布教中」と言えようか)。したがってTOEIC的思想に沿った新機軸を盛り込もうと思えば、いくらでもできたはずである。ところが、これだけ。つまり「グローバル英語とか何とかウルサイんで扱いますけど、実際問題、学生さんが苦労するのはTOEICという資格試験ですよね。これは辞書なんで、言葉レベルで扱いますね」という健康に冷めた目を感じる…のは私だけであろうか。まぁ言葉の辞典に徹しているのは間違いない。 要するに、英和辞典として出来が良い。特に最近の英語学習者は目が肥えているので、よく売れることだろう。売れてほしい。 それなりに売れてくれれば、発音表記の改善に予算をつぎ込むこともできるだろう。研究社の発音表記の伝統は理解できる。大きく変えるにはコストもかかる。英語の先生方が嫌がると売り上げに響くとかいう事情もある。でも、もうダメでしょう。現代英語の発音表記を、日本人の英語の先生の慣例や出版社の事情で決めるのが無理筋なんですから。(ことは発音表記に限らないのだが…本日はこれまでということでひとつ。) |
大修館『ジーニアス英和辞典(第5版)』(2014年)
こりゃ大変。この新版でぜんぜん違う辞書になった。かつて研究社の『英和中辞典』が第4版から第5版になった時に大きく変わり、第6版で別物になった、あれを思い出す。 初版が刊行された時には(1988年)画期的な英和辞典であった。英和辞典は、英米の辞書や語法書を(良い意味で)カンニングして作る。「ジーニアス」は、その作業を徹底したのである。結果として、英語の専門家がバラバラの文献で目にするような情報が一箇所にまとまった辞書が出来上がった。その意味ではお買得というか、作った人達(主に関西の英語学者達)の努力と熱意が伝わるものだった。例えば dolphin fish を引くと「死ぬときには体が変色するので有名」なんていうニッコリしたくなるような注記があった(これはちょっと古い版の Oxford Pocket Dictionary に記載されていた情報で、こんなものまで拾って入れたのだ)。ちょっと行き過ぎて、正誤判断の怪しい用例を盛り込んでしまったこともある。学習者のことなんて考えていない。作るために作ったような辞書だったわけだ。 語法注記にしても、「オレは調べたんだ、知ってるんだ」という筆致が多かった。英語(学)関係者なら、各項目をじーっと見て、「おぉ、これはあの辞書(本)の、あの部分を取り入れている!」と感心する。だからこそ高校の英語科目責任者なんかの目に留まり、学校ぐるみで採用というケースが続出し、いわば必要以上に売れてしまった。しかし、すべての学習者に好まれるかどうかは別問題である。 さて、そんなジーニアスだったが、第4版、そして第5版で大きく変わった。近年の英和辞典で定番となってきたカラー絵ページを加え、「コミュニケーション文法」的なイラストも増やし(ネタ本も透けて見える)、語法注記も「こんな風に言うんだよ」的な書き方にシフトした。また、日本の学習者が奇妙に好む類語解説を増やしているのも興味深い(これはかつて旺文社の得意技だった)。元々そういう方面では不器用な辞書なんだから、「無理しなくても良いのですよ」と声をかけたくなるほどである。 しかし、純粋に言葉の辞書として大きく改訂されたのは間違いない。「英英辞典の説明を目で見て訳しながら書いたような訳語」が多かったのもずいぶん改善された。語義や成語も大幅に見直され、書き直されている(上記 dolphin fish の注記もこの第5版で消えた)。ジーニアスの売りであったいわゆる語法注記の類もかなり改訂された(例を挙げるときりがないが、例えば believe の最初の語義で出てくる語法注記が典型)。発音表記も、かつての信じがたい時代遅れの表記から、やっと英語標準に近づいてきた。 つまり大幅に改善されたのだ。良いことである。素直にそう思う。しかし冷静な市場判断は別問題。ずいぶん分厚くなった第5版を検討しながら、「さぁこの辞書は誰に勧めれば良いのだろう」と思ってしまうのも事実なのだ。一方ではジーニアスらしさを捨て、ある意味学習者に擦り寄った。他方では良くも悪くもジーニアスらしさを強化した。「見やすい・わかりやすい」を求める人は敬遠するかもしれない。「英語オタクを満足させる情報」を求める人は明るいカラーイラストに抵抗を持つかもしれない。要するに、二兎を追ったのだ。 でもそんな辞書があっても良いだろう。色々なものがある、それは健康な市場の証明である。あれこれ見て選ぶのが良いでしょう。ジーニアスを選ばない人も、「辞書を選ぶとはどういうことか」を考えることができる。「前の方が良かった…」という人は古本市場へ!(めっちゃお買い得) |
三省堂『ウィズダム英和辞典(第3版)』(2012年)
(2018年に4版が出てます。そりゃ研究社『コンパスローズ』(上述↑)に対抗するためには当然の処置でありましょう。もうすぐ検討しますので、ちょっと待ってくださいね。) 「コーパス使ってます」と宣伝する英和辞典ばかりになった今日この頃であるが、 最初からちゃんとコーパスを見て執筆しました、というのは当時としては珍しかった。だからといっていきなり極端に斬新なものが出来上がるはずはない(これは良いことである)。 版を重ね、初版以来の「ライバルはジーニアス」という姿勢が強まったというか、普通の学習辞典としての作りを徹底したというか、全体に「普通の学習〜一般辞典」になってきた感じである。記述過多な面も少しく修正された。発音記号も(やっと!)英語標準に近づいた。 全体に標準的になったというわけで、macOS や iOS にはこのウィズダム英和と和英がついてくる(まだ2版かな?)。ついでに言うと「大辞林」もつくし、Oxford Dictionary of English もつくし、Duden のドイツ語辞書もつく。 |
学研『アンカーコズミカ英和中辞典』(2007年)
『スーパーアンカー英和辞典』(↑前述)は優れた学習英和辞典である。主な対象は高校生前後、英検で言えば準2級~準1級程度といったところだろうか。 その辞書も、初版発行以来それなりに年月が流れた。すると、そろそろスーパーアンカーで英語を学んだ大学生や社会人が出現するわけである。そういった人々を 対象にこの辞書が出た。 一般に、それなりに売れる学習辞典ができると、一定期間後にその拡張版が登場する。例えば、かつて研究社の「ライトハウス英和辞典」があって、それから 拡張版の「カレッジライトハウス英和辞典」が出た。これも、その伝である。しかし、スーパーアンカーの場合、中身がずいぶん丁寧・良質であるのが違うと言えようか。 しかし拡張版は拡張版である。基本的に「アンカーコズミカ」の良いところは「スーパーアンカー」の良いところである。というか、見たところ、基本語についてはスーパーアンカーそのものである。革新的に新しいところはない。大学生・一般向けに収録語数を増やしたのである。この種の英和辞典を使う人は、結構難しい単語 を調べる機会がありつつも、基本語の習得の必要もあるものだ。これを使えば、両方できるのだから便利だと言えよう。 学生時代の私は、少々難しい単語を調べるための辞書と、基本語の使い方を体得するための学習辞典を使い分けていた。外国語なんぞを習得しようと思えば、 誰でもそういう工夫をするものだ。そこらの手間が省けるんだから便利だと思えば、それでも良いんじゃないでしょうか。 |
小学館『プログレッシブ英和中辞典(第5版)』(2012年)
ううむ、ちょっとショック。高校から大学にかけて「プログレッシブ英和と岩波の国語辞典」を常に持ち歩いていた私としては(カバン重かったでぇ)、この辞書が生き残っているのがなんだか楽しいんだけど、今回の改訂で「ビジネス向け」っぽくなってしまった。仕方ないか。でも大人向けの良い英和なら『新グローバル』(すぐ下↓)がありますしねぇ… 語源情報を取り去ってしまったのは、象徴的である。あまりにも寂しい。そんな教養はお金にならないからでしょうか。我々が死ぬまで学び続けるのって、コスパ悪いんですか。あぁ… それでも『ランダムハウス英和大辞典』(後述)を基盤に作られた、一般向け学習辞典であることには変わりない。語義の日本語が明快なのも重要な特徴(この点、「ジーニアス」と好対照;ランダムハウス英和を圧縮する編集作業の際、日本語が磨かれたのか)。英検1~2級、TOEIC高得点などが目標の学習者にもお勧め。学習辞典としても質が良く、時事英語を読む辞典としても使える…だったんだけど、ちょっと後者に鞍替えしたというところ。 他の学習辞典が派手になりつつ焦点がボケていく中、「読みやすい、わかりやすい」言葉の辞典としての長所を保ってくれているのは嬉しい。と思っておくことにしましょう。(3780円) |
三省堂『新グローバル英和辞典(第2版)』(2001年)
誠に便利な、実用型辞典。これほどセンスの良い辞書がもはや普通に売ってないのは惜しい。まぁ確かに、コンピュータ関係の新語も含めて10万項目収録…と言っても10年以上も前の話だからなぁ。 しかし、言葉の辞典というのはそれほど急に古くなるものでもない。いわゆる連語(collocation)の欄が斬新にして便利(ただし、和訳なんぞついていないから、その点では初心者向けではない)。さらに語義の示し方がわかりやすい。semicolonを引けば「semicolonの使い方」という囲み記事が出てくる。presidentを引けば米国の歴代大統領の名前がズラリと載っている。例文が生きている。― 等々、一味違う実用性がとっても嬉しい。英語の使い方に徹しており、最近流行のウジャウジャした語法解説はないのが特徴。英語で生活しようという人には嬉しい辞典であろう。 |
研究社『新英和中辞典(第7版)』(2003年)
研究社の英和中辞典は、かつては例文に基本的な誤りがあったりしてズッコケだったが、第5版で画期的に良くな り、第6版で語数がぐっと増えた。そしてこの第7版で、さらにぐっと一歩前進。英語という言語の情報も学習辞典的な情報も、バランスよく盛り込まれた、良質の辞書に仕上がっている。(英和大辞典の新版(後述)を出したばかりだから、その情報の蓄積もあったのかもしれない。)これほど質の良いものを作る実力がありながら、どうしてしょーもない辞書も次々に作るのか、これが私にはわからん。10万語収録。 ☆オマケ情報:この辞書にはEPWING形式も電子辞書形式もあり、なんやかや でコンピュータやソフトのオマケに付いてくることも多い。 |
研究社『ルミナス英和辞典(第2版)』(2005年)
初版に比べて良くなった、かな。収録語数が 多く、しかも学習辞典としての親切な情報も多い、便利な辞書である。新聞や雑誌を読むのに使える(TOEIC 対応的な)収録語数も欲しい、でも学校英語の復習もしたい、という人にお勧めできる辞典である。 悪くない、けど大きな特徴もない、だったんだけど、今回は発音にかなり気を使っているのが特色;これはこれからの傾向になるであろう。収録語句10万。 |
<ググる前にちょっと待て:電子データならではの世界>
研究社『リーダーズ英和辞典(第2版)』(1999年)
← ええと、すみません。これを書いてるのが2012年8月7日です。んで、このリーダーズの新版(3版)が出るのが8月25日ということで。以下、旧版の話ですが、そのうち新しくします。
サイズの割に、ものすごい情報量。中型辞典サイズに、人名・地名はもとより、有名な映画や小説の題名からポップス歌手・ヒット曲の題名までもが収録され ており、なんと27万語収録。翻訳家も好んで使う、便利な辞書である。使う人は「こんなものまで載っているなんて!」と驚くことが多い。
文法解説が親切なわけでもない。丁寧な語法解説があるわけでもない。したがって、学習辞典としてお勧めするわけではない。しかし、「とにかくたくさん言 葉が載っている、情報豊富な辞書」が欲しい人には、お勧め。ギッシリ・タップリの2900ページ、お買い得と言えるだろう。
これの補遺版として『リーダーズ・プラス』が出ている。両方合わせて46万語、もう無敵といいたくなるほどの収録語数となる。こうなると、いちい ち両方引くのが面倒になるが、世の中よくしたもので、この二冊を合わせたCD-ROM版が出ており、プロの必需品となっている。
サイズの割に、ものすごい情報量。中型辞典サイズに、人名・地名はもとより、有名な映画や小説の題名からポップス歌手・ヒット曲の題名までもが収録され ており、なんと27万語収録。翻訳家も好んで使う、便利な辞書である。使う人は「こんなものまで載っているなんて!」と驚くことが多い。
文法解説が親切なわけでもない。丁寧な語法解説があるわけでもない。したがって、学習辞典としてお勧めするわけではない。しかし、「とにかくたくさん言 葉が載っている、情報豊富な辞書」が欲しい人には、お勧め。ギッシリ・タップリの2900ページ、お買い得と言えるだろう。
これの補遺版として『リーダーズ・プラス』が出ている。両方合わせて46万語、もう無敵といいたくなるほどの収録語数となる。こうなると、いちい ち両方引くのが面倒になるが、世の中よくしたもので、この二冊を合わせたCD-ROM版が出ており、プロの必需品となっている。
研究社『新編 英和活用大辞典』 (1995年)
勝俣銓吉郎がひとりコツコツと英語語法ノートを作り、その途方もない努力の集大成としてでき上がった辞典、というか膨大なデータ著作があった。前書きを読むだけで襟を正すような、そんな本である(古書店で見かけたら、序文の一読をお勧めする)。それが改訂を重ねてこういう辞典になっているわけである。
ある単語がどの単語と結びつくのかという、いわゆる連語(コロケーション)の記述に徹した辞書である。特に英語を書く際には「よくある言い方」のデータ が必須であるから、これは大変役に立つ。比較的大きめの辞典であったが、電子版も出回っているので検索しやすくなった。
ある単語がどの単語と結びつくのかという、いわゆる連語(コロケーション)の記述に徹した辞書である。特に英語を書く際には「よくある言い方」のデータ が必須であるから、これは大変役に立つ。比較的大きめの辞典であったが、電子版も出回っているので検索しやすくなった。
<いわゆる大辞典:調べものには、この三つ>
研究社『新英和大辞典(第6版)』(2002年)
わが国の英和辞典の最高峰、由緒正しい英和大辞典の最新版。なんと22年ぶりの改訂。「ITからシェークスピアまで」のコピーには微笑んでしまうが、や はり信頼できる26万項目収録は大したものである。図書館に、あるいはご家庭に、ぜひ一冊あるべき辞書といったところ。
岡倉由三郎(これは『茶の本』の岡倉天心の弟)の『研究社新英和大辭典』が出たのが昭和2年。以来、改訂が続けられ、今日に至る。記述は正確。語源情報は圧巻。軽薄極まる出版物が溢れる昨今、こういう辞書があるのは嬉しい。使わぬ人も、これがあることを知っているべき。
なお、これによって、非常に評価の高かった第5版が「旧版」となる。古本市場に出回るやつを安く買うのも悪くない。(その前の第4版も、学習者のための 熱い気持ちが伝わる良い出来だったなぁ。私もこれだけは捨てられず、今でも本棚に置いている。)
☆ オマケ情報:CD-ROM版データはEPWING形式なので使いやすい。仕事で使う人なら、検討なさってはどうでしょう。
岡倉由三郎(これは『茶の本』の岡倉天心の弟)の『研究社新英和大辭典』が出たのが昭和2年。以来、改訂が続けられ、今日に至る。記述は正確。語源情報は圧巻。軽薄極まる出版物が溢れる昨今、こういう辞書があるのは嬉しい。使わぬ人も、これがあることを知っているべき。
なお、これによって、非常に評価の高かった第5版が「旧版」となる。古本市場に出回るやつを安く買うのも悪くない。(その前の第4版も、学習者のための 熱い気持ちが伝わる良い出来だったなぁ。私もこれだけは捨てられず、今でも本棚に置いている。)
☆ オマケ情報:CD-ROM版データはEPWING形式なので使いやすい。仕事で使う人なら、検討なさってはどうでしょう。
小学館『ランダムハウス英和大辞典(第2版)』(1994年)
いくら帯に「全面新版」と書いてあっても…1994年って…私も最近使ってないなぁ。とはいえ、これが消えてもらっては困るんですなぁ。
基本的には、アメリカの代表的辞書、The Random House Dictionary of the English Language (2nd edition) (1987) の日本語版である。しかし、強力な編集メンバーが集まって総力を結集した結果、オリジナル版よりも収録語数が多く、また日本人にとって役に立つ情報や解説 を増強した辞書になった(例えば third sector を調べればわかる)。語法解説も豊富で、専門用語などには、訳語だけでなく解説があり、有名な映画やヒット曲の題名も入っている。とにかく使って面白く買って損のない辞書(私も昔は翻訳の仕事中にまずサッと使うのがこの辞書だった)。総収録語数34万5千語(オリジナルに比べて見出し語3万、語義5万の追加)。
☆オマケ情報:これにはCD-ROM版がある…けど、独自フォントを使ったり、独自ソフトが変だったりで、あまり評判は良くない。中身が良いだけに残念。
☆ なんとまぁ、今ではオンラインで使えるのですね。
基本的には、アメリカの代表的辞書、The Random House Dictionary of the English Language (2nd edition) (1987) の日本語版である。しかし、強力な編集メンバーが集まって総力を結集した結果、オリジナル版よりも収録語数が多く、また日本人にとって役に立つ情報や解説 を増強した辞書になった(例えば third sector を調べればわかる)。語法解説も豊富で、専門用語などには、訳語だけでなく解説があり、有名な映画やヒット曲の題名も入っている。とにかく使って面白く買って損のない辞書(私も昔は翻訳の仕事中にまずサッと使うのがこの辞書だった)。総収録語数34万5千語(オリジナルに比べて見出し語3万、語義5万の追加)。
☆オマケ情報:これにはCD-ROM版がある…けど、独自フォントを使ったり、独自ソフトが変だったりで、あまり評判は良くない。中身が良いだけに残念。
☆ なんとまぁ、今ではオンラインで使えるのですね。
大修館『ジーニアス英和大辞典』(2001年)
学習辞典としての『ジーニアス英和辞典』は、出来が良かった。そこで、その後の新しい情報をもとに、収録語数をぐんと増やし、説明も詳しくしたもの。
確かに、活字の感じから記述の仕方まで、『ジーニアス』の拡大・発展版である。収録語数25万5千。今までの『ジーニアス』を引くぐらいなら、こっちを使う方が良いだろうが、学習辞典にしては大きすぎるし(CD-ROM版もあるが、使いにくいぞ)、いわゆる大辞典にしてはそれほど大きくもないし ― 中途半端な気がする。きっと、英語の先生が買うんだろうなぁ。正直、あんまし使えまへん。しかし、現在、日本にこの規模の大辞典が少ないので紹介する次第。
確かに、活字の感じから記述の仕方まで、『ジーニアス』の拡大・発展版である。収録語数25万5千。今までの『ジーニアス』を引くぐらいなら、こっちを使う方が良いだろうが、学習辞典にしては大きすぎるし(CD-ROM版もあるが、使いにくいぞ)、いわゆる大辞典にしてはそれほど大きくもないし ― 中途半端な気がする。きっと、英語の先生が買うんだろうなぁ。正直、あんまし使えまへん。しかし、現在、日本にこの規模の大辞典が少ないので紹介する次第。
<語源>
研究社『英語語源辞典』(1997年初版)
これは、大変な仕事です。日本人って、スゴイ!と思うのはこういうときであります。かのOEDの語源記述をある意味超えている。こういう辞典が日本で出ちゃうんだから、まぁなんと申しますか。
ある単語にぜんぜん違った意味が二つある。どういう関係があるんだろう…というとき、これを見れば一目瞭然。そもそもの形、意味、その変化の過程が見事 にたどれる。そればかりか、サンタクロースとは何者か、「カンガルー」という名前の真実は等々、ほとんど雑学に属する内容までもしっかり書いてあり、大い に楽しめる。これからも「語源で覚える英単語」みたいな本はさらに増えるだろうが、本物の面白さには、かなうまい。(大判26250円、中身は同じ縮刷版 で7770円)
ある単語にぜんぜん違った意味が二つある。どういう関係があるんだろう…というとき、これを見れば一目瞭然。そもそもの形、意味、その変化の過程が見事 にたどれる。そればかりか、サンタクロースとは何者か、「カンガルー」という名前の真実は等々、ほとんど雑学に属する内容までもしっかり書いてあり、大い に楽しめる。これからも「語源で覚える英単語」みたいな本はさらに増えるだろうが、本物の面白さには、かなうまい。(大判26250円、中身は同じ縮刷版 で7770円)
三省堂『英語語義語源辞典』(2004年)
題名を見ると特殊な辞書かと思われそうだが、とりあえず普通の英和辞典。中級者~上級者向けというか、ちょっと 英語を学んだ人が使うと嬉しく役に立つであろう辞書。ポンと中核的語義を示し、その他の語義を示し、続いて語源と語義の派生を示すことによって、「はぁ~ なるほど。この単語って、こういうわけでこういう意味になったりするのね」と納得できるように作られている。
ただ、その結果、いささか中途半端な出来になっているのも否めない。キチンとしかも面白く語義の変遷をたどると…大幅にスペースを食ってしまう。だから説明は非常に簡略化されている。結果、本来面白いものが、あんまり面白くなくなっちゃうのである(執筆なさる方々も辛かっただろうなぁ…)。
単語の背後にはそれぞれ物語がある。物語というのは、要約しちゃうとダメなのだ。いや、その要約さえも紙面を食う。したがって、その分、収録語数その他を抑える結果になった。中級者~上級者なら、それなりの単語を調べたい時もあろうが、それが載っていないことも多くなる。良き説明と収録語数のジレンマ、(紙の)辞書編集における永遠のテーマである。まぁ、こういう時代ですし、いっそCD-ROM版発行を前提に、紙数制限を気にせず作っては?
しかし、単語を覚えるためにせよ、言葉に対する好奇心を刺激するためにせよ、この種の「単語の意味の由来を解説 した本」はこれからの重要な方向性になると思われる。もちろん、このあたりが知りたければOEDを読めば良いわけだけれど、それは学習者にとって手軽な作 業ではない。そのOEDを圧縮した英語辞典の労作もあったけれど(↓「涙の一冊」参照)、あれはやはりOEDの何たるかを納得してから「ほほぉ」と読むものであって、 やはり学習者の手引きとなりやすいものではなかった。とくれば、この辞書、まずは素直に歓迎してあげたい気持ちなのである。
ただ、その結果、いささか中途半端な出来になっているのも否めない。キチンとしかも面白く語義の変遷をたどると…大幅にスペースを食ってしまう。だから説明は非常に簡略化されている。結果、本来面白いものが、あんまり面白くなくなっちゃうのである(執筆なさる方々も辛かっただろうなぁ…)。
単語の背後にはそれぞれ物語がある。物語というのは、要約しちゃうとダメなのだ。いや、その要約さえも紙面を食う。したがって、その分、収録語数その他を抑える結果になった。中級者~上級者なら、それなりの単語を調べたい時もあろうが、それが載っていないことも多くなる。良き説明と収録語数のジレンマ、(紙の)辞書編集における永遠のテーマである。まぁ、こういう時代ですし、いっそCD-ROM版発行を前提に、紙数制限を気にせず作っては?
しかし、単語を覚えるためにせよ、言葉に対する好奇心を刺激するためにせよ、この種の「単語の意味の由来を解説 した本」はこれからの重要な方向性になると思われる。もちろん、このあたりが知りたければOEDを読めば良いわけだけれど、それは学習者にとって手軽な作 業ではない。そのOEDを圧縮した英語辞典の労作もあったけれど(↓「涙の一冊」参照)、あれはやはりOEDの何たるかを納得してから「ほほぉ」と読むものであって、 やはり学習者の手引きとなりやすいものではなかった。とくれば、この辞書、まずは素直に歓迎してあげたい気持ちなのである。
<番外編:恐るべき一冊>
岩波書店『熟語本位 英和中辭典』(1933年)
普通、辞書は、多くの人が協力して書く。ところがこの辞書は、齋藤秀三郎という日本人が、一人で書いてしまった。
普通、辞書は、10年も経つと見向きもされなくなる。ところがこれは発行以来80年もたった今日、翻訳家をはじめ、英語のプロが絶賛し、愛用する。これはもう、怪物である。
いわゆる個性の強い内容だし、基本的にはある英国の辞書(COD)を引き写したものだし、いろいろ意見はあろう。しかし、名人芸を投入した名作であることは間違いない。
普通、辞書は、10年も経つと見向きもされなくなる。ところがこれは発行以来80年もたった今日、翻訳家をはじめ、英語のプロが絶賛し、愛用する。これはもう、怪物である。
いわゆる個性の強い内容だし、基本的にはある英国の辞書(COD)を引き写したものだし、いろいろ意見はあろう。しかし、名人芸を投入した名作であることは間違いない。
<番外編:涙の一冊>
岩波書店『英和辞典(新版)』(1958年)
そもそも英語の辞書の伝統は、英語学習だのコミュニケーションだのとは別の世界にあった。一つ一つの言葉につい て、本来の意味・変化をたどり、典型例を示す。田中菊雄は、この伝統の頂点たるOEDを圧縮して小型英和辞典にした。したがって、各項目を語義配列順に読 んでいけば、すなわちその語の来歴を知ることになるのだ。
ホントは、こういうのを、辞書というのだろう。残念ながら、もう本屋では手に入らないが(私はとある小さな町の古本屋で革装版を200円で入手した;感激だったなぁ)、大切な一冊として紹介する次第。
ホントは、こういうのを、辞書というのだろう。残念ながら、もう本屋では手に入らないが(私はとある小さな町の古本屋で革装版を200円で入手した;感激だったなぁ)、大切な一冊として紹介する次第。