Cambridge English Pronouncing Dictionary. (18th edn) Cambridge: UP.
Daniel Jones が1917年に出版して以来、改訂を続けて今日に至るのだから、最も由緒正しい発音辞典と言えるだろう。現行の版は Peter Roach を中心とした編集陣が手がけている。いわゆる発音辞典として使えるだけでなく、英語の音・表記についての解説、6人の専門家による記事、巻末の用語解説と内容が充実しており、英語の発音一般についての手っ取り早い入門書にもなる。 |
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Longman Pronunciation Dictionary. (3rd edn) Essex: Pearson Education Ltd.
John Wells が一人で手がけた労作。発音(ないし音声学)の用語解説や、音と綴りの関係について随所に解説がある。意見の分かれる発音はアンケート結果をグラフで示したり、見て楽しい内容。 |
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The Routledge Dictionary of Pronunciation for Current English. (2nd edn) New York: Routledge.
Upton さんによる発音辞典であり、当然ながら Upton 式である。初版はオックスフォード大学出版局からの出版だったので、題名は The Oxford Dictionary of Pronunciation for Current English だった。 正直なところ、参照する機会は少ないでしょう。買うとすごく高いし…(2019年現在;私は中古で安く仕入れたけど…使う機会は少ないなぁ)。ただ、イギリス国内向けオックスフォード系の辞書で広く採用されている発音記号を作った Upton さんによる発音辞典だし、無視するのもなんなので、紹介だけしておく次第です。手元に置く値打ちがあるのは、上の二つ↑。 |
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Cruttenden, A. 2014. Gimson’s Pronunciation of English. (8th edn) London: Routledge.
Jones の弟子だった Gimson が1962年に Pronunciation of English という本を出版、これが版を重ね、Gimson の死後、第6版以降はその弟子の Cruttenden が引き継いでいる(題名が Gimson’s ... となっているのはそのため)。英語を母語としない人に英語を指導することについてもかなりのページを割いており、英語関係者の必読書。 |
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International Phonetic Association 1999. Handbook of the International Phonetic Association.
この明快な題名がすべてを物語っている。英語の t とフランス語の t は違う音であるが、それは「同じ t だけど微妙に違う音」なのか、あるいは違う記号を使うべきなのか。書けば同じ t でもあるし、「微妙な違い」と見なすとすれば、その微妙な違いを説明・伝達するには、どんな表記をすればわかりやすいか。日本語の「た」の子音も t に近そうだが、このあたりどうなってるのか。いや日本語といっても方言差もある。個人差もある。どうするどうする… そんな言い出せばキリのない言語の実態に即して、「とりあえず基本的な記号のセットと、その他補助記号のセットを用意しました。コンピュータで扱いやすいよう、それぞれに番号もつけ、コード記号も割り振ってみました。必要に応じてご利用ください」というのが、このハンドブックの趣旨である。 |
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Crystal, D. 2018. Sounds Appealing. London: Profile Books.
これは楽しい。英語について語らせたら際限なく本を出版し続けるクリスタルさんによる英語発音雑話。 |
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Jones, D. 1960. An Outline of English Phonetics. (9th edn) Cambridge: Heffer & Sons.
現代の英語音声学・発音表記を確立した「開祖」だけあって、鋭い(そして心遣いの感じられる)観察から練習方法まで散りばめられている。確かに古い本ではあるが(初版発行は1918年)、英語の音の本質的な部分を捉えているのは確か。今なら無料で読めるでしょうけれど、中古で一冊持っていると嬉しいかも。 |
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Ladefoged, P. 2005. Vowels and Consonants. (2nd edn) Oxford: Blackwell.
言語の音そのものについて、「そもそも母音とか子音って何なの?」と考えて読むには良い本です。 |
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Ladefoged, P. & Johnson, K. 2011. A Course in Phonetics. (6th edn) Boston: Wadsworth.
どこに行っても英語音声学の入門教科書はこれ。みたいな本ですが、それだけのことはある。わかりやすい。お高くとまらない。面白い。 |
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Ladefoged, P. & Maddieson, I. 1996. The Sounds of the World’s Languages. Oxford: Blackwell.
英語の発音だけ見ていると視野が狭くなります。世界の言語音という大きな文脈に入れてみましょう。 |
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Lindsey, G. 2019. English After RP. Palgrave Macmillan.
音声学者であると同時に、巧みな発音指導で知られる著者だけあって、面白い点を次々に並べてくれます。いわゆるイギリス英語の近年の音変化について知りたければ、今のところこれは決定版でしょう。 巻末に Mini Dictionary というのがついていて、最近の発音の変化について簡単に列挙してくれています。いわばこれが「基礎データ」であり(だからこちらを先に読むほうが正しいかも)、これらの変化について本文で解説してくれています。(目下日本に暮らしている私としては、「えぇ〜(今じゃそんな音になってるのぉ)!?」と声に出して驚く点がいくつもありました。) その解説も短い章に分かれており、わかりやすい。各章のタイトルが簡潔にして楽しく、著者が楽しんでいるのがわかります。用語等については音声学の基本を知っている必要がありますが(とはいえ Longman Pronunciation Dictionary や Cambridge Pronouncing Dictionary の解説が読める程度で十分)、過度な一般化・理論化はせず、専門的な話に入り込んだりすることなく、淡々と面白い音の話をしてくれます。 もちろん何もかも「正しい」はずもなく、例えば STRUT 母音についての観察など「ちょっと待ってください私にも言いたいことが」と言いたくなる点もあります。しかし、まさにそこがこの本の良いところ。英語話者として音声学者の観察を生き生きと報告してくれているのです。 英語音声学の入門は終わっている人が読めば知識の補完になるでしょう。逆にこの本から音声学入門書に行く人がいてもおかしくない。面白い点を正直に観察し、わかりやすく解説。これは良い本です。 |
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Ashton, H. & S. Shepherd, 2012. Work on Your Accent. Collins.
「訛りを直そう」という題ですが、実のところ良質の英語発音指南書です。「いろんな訛りがあっても良い。でも基本は押さえよう」という健康な発想に基づき、標準的な英国英語発音を発音記号に基づいてわかりやすく解説してくれます。 ちょっとした序論、各子音の紹介、各母音の紹介、音をつなげること、リズム・強勢、その組み合わせ、綴りと発音、…というよくある構成ですが、どこを取っても明快。二人の著者は発音矯正指導のプロということもあり、いわゆる「英語の先生」が陥りがちな無意味な話がなく、ひたすら「好感を与える良い発音」に向かうところが最大の特徴と言えます。 面白い工夫もいろいろあります。学習者の母語を8グループに分け(ちなみに日本語は第1グループに属す)、それぞれの音について「第2グループ母語話者の人はこうなりがちなので気をつけよう」といった的確なアドバイス。子音から話を始め、母音もschwaから紹介するというわかりやすい順番。それぞれの音について口の形を図と写真で明示。特に、母音四角形に口の正面写真を並べた母音一覧表(53ページ)は一見の価値あり。 付属のDVDも良くできていて、「普通そこまで見えないよ」という口や舌の動きを高画質で収録(ほとんど官能的!)。見ているとこちらも同じように口が動かしたくなります。 私の知る限り、英語発音本の中ではトップグループに入る、出来の良い本です。英語の発音、特に標準的英国英語の発音を理解したい(練習したい)という人にはオススメです。英語の先生にも大いに参考になることでしょう。 |
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Pullum, G. & Ladusaw, W. 1996. Phonetic Symbol Guide. (2nd edn) Chicago: UP.
とにかく使われたことのある表記を数多く並べ、それぞれの記号に「IPA標準ではどういう定義か」「アメリカではどういう定義か」「その他の情報(どんな音か、誰がいつ使ったか等々)」「この記号そのものの由来」を簡潔に説明してくれる。まさに労作。 英語の場合、種々の論争と妥協の末、なんとか標準的な表記が確立してきたと思われるので、この本では主にそれを紹介している。しかし日本で発行されている英和辞典の採用している発音表記がかなりバラバラなので(特に母音)、日本の英語学習者は記号の乱立を目にすることにもなる。「この記号、いったい何?」と気になったら、その由来まで判明する、そんな便利な「音声記号辞典」である。 |
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Roach, P. 2009. English Phonetics and Phonology: a practical course. (4th edn) Cambridge: UP.
定番の英語発音・音声学入門書。かつての私はこれだけをネタにして発音を指導していたことがあるくらい…おっとっと、うんと駆け出しの頃の話です。 |
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Windsor Lewis, J. 1972. A Concise Pronouncing Dictionary of British and American English. Oxford: UP.
このような良書が古くなって忘れ去られるのは惜しい。 巻頭部分の解説だけでも読む値打ちがある。著者がいかにしてこの英語発音表記に至ったのか、なぜ長さ記号(:)を使わないことにしたのか、極めて理性的で「良い先生」の立場から説いている。それは21世紀の今になってもまったく正論である。 他にも「丸い母音」の表示など、実に良いアイディアに満ちている。普通に英語に取り組む人は、目が覚める思いがすることだろう。今の学校英語は、何をしとるのか(アホらしい)。 |
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